楽器屋探索ディープレポート Vol.31
Guitar shop Charis
- ギターショップ・カリスについて
- 2009年4月にオープンした、クラシックギターの魅力あふれるギターサロン。恵比寿駅東口から徒歩2分のマンションの一室、くつろいだ雰囲気の店内には、作り手の個性が存分に表現された手工品の数々が並ぶ。ベストコンディションに管理されたヨーロッパ輸入ギター、国産手工ギターの販売およびメンテナンス、初心者向けの無料ギタークリニックやインストアライブも行われる。毎月開催のサンデーサロンコンサートではギター独奏、重奏で参加者募集。クラシックギターファンの気さくな演奏発表と交流の場として親しまれている。
- ギターショップ・カリス店舗情報
- ギターショップ・カリス
[店舗営業終了] 渋谷区恵比寿4-4-2 クレスト恵比寿601
TEL:03-6459-3070
営業時間: 11:00〜18:30(祝日17:00)
日曜・月曜定休
楽器店の中の人に話を聞いてみた〜 [Closed] ギターショップ・カリス 編
このコーナーは、楽器店でミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューしてお話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。
本日は、恵比寿のクラシックギター専門店「ギターショップカリス」代表の高矢研治さんにお話をお伺いします。それではオープンの時期と経緯からおしえてください。
2009年4月10日にオープンしました。今年で10周年です。この場所にはカリスがオープンする前にも、「シャコンヌ」というクラシックギターの専門店がありまして、そのお店のオーナーさんが引退する、という話が僕のところに来たのがきっかけで開業しました。
高矢さんはプレイヤーとしても活動されていますが、以前から音楽関係の仕事をされていたのですか?
プレイヤーといっても、今はアマチュアギタリストでプロではありません。二十代は、地方にある楽器店に勤務しながらクラシックギターを教えていましたが、三十代で東京に出てきてからは、音楽とまったく関係のない業界の仕事をしてきました。
どのような経緯でギターショップをオープンすることになったのでしょう?
趣味としてですがギターに関する活動はずっと続けていましたし、アルベルト・ネジメ・オーノ(禰寝孝次郎)さんや尾野薫さんという有名なギター製作家との長い親交がありました。この場所は店舗として立地や規模もちょうどよいし、これは自分に「店をやれ」ということかな、と思いました。
それまでのお仕事をやめて開業されたのですか?
いいえ、いまでも従来の食品関連の仕事を続けていますが、いろいろご縁やタイミングが重なってギターショップのオープンに至りました。
それでは、ギターショップカリスで取り扱う楽器について教えてください。
メインは国産品と輸入品のクラシックギターです。
クラシックギター以外のギターは扱わないのですか?
フラメンコギターや他のギターも、委託や下取りがあった場合は対応していますが、進んで新品をあつかうことはほとんどありませんね。基本はクラシックギター一筋です。
本場はヨーロッパ。その発祥の環境下でこそ最高の音がでる
店頭のギターには、かなり高額なプライスの商品がならんでいますね…。
とくに手工のクラシックギターというのは、年に何本も製作できるものではないですから、このあたりが相場です。そもそも、量産しているメーカー品のように、どこででも手に入るようなギターを置いておいても、大型店と競争になってしまいますからね。
仕入れるギターの判断基準は?
私の好みで良いと思ったギター、たとえば、日本ではあまり知られていないオーソドックスなギターを好んで選んでいます。
輸入品が多いようですね。
はい、クラシックギターは向こうが本場ですからね。でも、そのほとんどがヨーロッパーに行き渡ってしまって、日本には入ってきません。だから、それらの楽器の情報もなかなか得られません。
そのような商品の仕入れは、どのようにおこなうのですか?
僕の場合は現地にコネクションがあるので個人で輸入したり、時々、自分でもヨーロッパに行ったりしています。それと、国内のエージェントも使って、海外国内、両方のルートで仕入れています。
ところで、輸入品が良いとされるのはなぜでしょうか?日本でも良いギターを作る方はいますよね?
はい、最近は日本製でも、かなり良いものが出てきていますし、価格的にも輸入品よりリーズナブルです。一番大切なのは、なにより製作者の技術です。でも、クラシックギターは材料が木材ですから、土地の気候、とくに湿度はとくに重要なんですよ。
その地域特有の風土が音色にも影響するということですね。
三味線や尺八などの邦楽器が日本で作られたように、その国々の湿度やそこで採れる素材が楽器に大きな影響を及ぼします。その発祥の地となった環境下で最高の音がでるように国々の楽器が作られているわけです。
日本で使用(演奏)するなら、同じ環境の日本で製作したほうが良いってことはないですか?
クラシックギターに関して言えば、製作の過程における木材の長期乾燥が重要で、日本の気候だと湿度が高いので、どうしても強制的に乾燥させなくてはなりません。一方、スペインあたりだと、場所にもよりますが、湿度は年中40%程度で、木材を自然乾燥させるには最適な環境です。そういう基本的な環境の違いでも、やはり微妙に音質は変わってきます。
クラシックギターは1人で弾く楽器。交流の場を作りたい
本場ヨーロッパのギターというのは、具体的にどのような音がでるのでしょうか?
ヨーロッパの人々は個性が強いせいか、ギターの音色にも「色」がすごく出ているんですよね。何ごとにも「個性=色」を出すことが彼らの文化なのかもしれないですね。そこが大きな魅力のひとつです。オーソドックスなスタイルのなかにも、作り手の個性が存分に表現されている、そんなおもしろいギター、すばらしいギターを紹介していきたいと思います。
お客さんの年齢層というとどのあたりですか?
40~60歳代ですね。若いころに趣味でギターを弾いていた方、とくに団塊世代前後の方の定年が近くなって、再びギター活動を復活される方が多いですね。
その世代のギター人気は根強いものがありますね。やはり、若い人は少ないですか?
そうですね、なかなか若い人は手工ギターのような高価なものにはすぐに手が出せないですからね。でも、インターネットでも紹介していますし、多くの世代の方に興味を持っていただけたらいいですね。
サロンコンサートやイベントも積極的に行われていますね。
はい、毎月「サンデーサロンコンサート」というアマチュアのコンサートを開催していて、毎回多くのギターファンで盛り上がっています。クラシックギターは、主に1人で弾く孤独な楽器なので、演奏発表や交流の場も充実させています。
それではつづいて、高矢さんと音楽の出会いについておしえてください。
僕は宮城県の生まれで、小学校6年生の時に聴いた「禁じられた遊び」が音楽の出会いですね。「ギターってこんなことできるんだ!」と感動して、ギターという楽器に興味をもちました。
ギターを手にされたのはいつごろですか?
実際にギター演奏をはじめたのは中学生からで、じつを言うとベンチャーズのコピーが最初でした。のちにビートルズにも影響を受けます。
ギターデビューはエレキだったのですね。
そうなんです(笑)。でも、「ギターをやるならクラシックギターを」という思いがありましたので、中学生のときにクラシックギターを習いはじめました。高校卒業後は、大学に進学し、クラシックギター部に入部し、コンサートなどの演奏活動も行っていました。
コンサートやクリニックを通じてギターの魅力を伝える
その後、ギター教師などを経て、東京に上京したあともギターを続けてこられた?
趣味としてですが、上京してからはボサノバやフュージョン、ポピュラーなど、クラシック以外のジャンルも興味をもち、親しんできました。そういった経験もあって、さまざまな視点から、クラシックギターの魅力や楽しみ方をご提案できるかと思います。
高矢さんの楽器に対する造詣の深さ、演奏のこともいろいろ相談できるのは心強いですね。
ギターの世界から、一時離れていたこともありましたが、先述しましたように、小学生のときクラシックギターに出会って以来、人生のかたわらにはギターがありました。そして、10年前にこの場所に巡りあい、これも天啓だと思い、人生最後にギターに関わろうと、ギターショップカリスの開業へと至りました。
それでは最後に、ギターショップカリスからメッセージをおねがいします。
今日は、ギター販売の話をたくさんしてしまった気がしますが、僕としては商売というより、僕が好きなギターを集めたマンションの一角で、ギター好きが集い、コンサートやクリニックを通じて、ギターの魅力を楽しんでもらいたい、そんな場所にしたいと思っています。ぜひ、遊びに来るような感覚でお越しください。
毎月開催の「サンデーサロンコンサート」の出演者も募集されていますので、クラシックギターファンはぜひ参加してもらいたいですね。本日はありがとうございました。
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