e楽器屋.comが取材した楽器店・インタビュー特集(全36回・2015年3月〜2019年12月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

楽器屋探索ディープレポート Vol.2

Drum Station リボレ秋葉原

ドラムステーションについて
ドラマーならその名を耳にした人も多いであろう『コージー村上』。その強烈なキャラクターと言動の節々に垣間見えるプロ魂。そんな特異な男の産物と言っても過言でないのが、昭和50年設立した日本を代表する楽器屋「イケベ楽器」のドラム専門店「ドラムステーション・リボレ秋葉原」である。豊富な品揃えを有する大型楽器販売店でありながら、痒いところに手が届くほどのマニアックな商品をも併せ持つ珍名店である。しかしそこに至るまでの経緯には、ドラム専門店に対するコージー村上氏の並々ならぬ情熱と愛情が込められているのだ。
ドラムステーション店舗情報
ドラムステーションリボレ秋葉原
千代田区神田佐久間河岸45  早川ビル1F
お問い合わせ:03-5825-6969
営業時間:11:00〜20:00 年中無休

楽器店の中の人に話を聞いてみた〜 ドラムステーション・リボレ秋葉原 編

このコーナーは、楽器店でミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューしてお話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

池部楽器店ドラムステーション店長 村上"COZY"克敏 氏

本日はイケベ楽器のドラム専門店「ドラムステーション」の『コージー村上』さんに、お話を伺いたいと思います。まずはお店の成り立ちを聞かせて下さい。

ドラムステーション・リボレ秋葉原は今年で14年目(2001年オープン)になります。僕自身は、イケベ楽器に入って20年になります。僕は元々大阪人なんですが、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件のあった年に上京してイケベ楽器入社したんです。震災が起きる二日前だったんで、震災の被害には合いませんでしたが…。

その年は大変な年でした。

すごいタイミングですよね。僕が入った時は、あくまでイケベ楽器総合ショップリボレ秋葉原店のドラムフロアだったんです。そのころは、ライブハウスCLUB GOODMANの下(地下二階)にありまして、今のお店の1/4にも満たないスペースにしかありませんでした。

いわゆる「ドラムコーナー」ですね。

僕が入社した頃は、ちゃんとドラムを知ってる人がドラムコーナーを担当していたわけではなかった事もあり、ドラムに詳しい僕が入ってからは売り上げが好調になってきたんです。それもあって、地下二階から地下一階に移動することになり、その際にドラム専門のフロアとなりました。

今のベースフロア(ベースステーション・リボレ秋葉原)があるところですね?

ですね。そして、2001年の5月にドラムステーション・リボレ秋葉原となり現在の独立した店舗になります。その後t、2004年には渋谷桜丘町にドラムステーション渋谷がオープンしました。

歴史がありますね。 さて、村上さんは『コージー村上』としてドラム界に知れ渡っています。このコージーはやっぱり…?

はい、コージー・パウエル(ハードロック界を代表するドラマー)です。お客さんも「あ、コージー村上さんだ!」とか、スタッフも質問する時に「コージーさーん!」と呼んできたりします。よく知り合いに「お前の名前はコージーでいいのか!?」と言われますけど、全然良いです(笑)。 

お店に村上さんのような話しやすいスタッフさんがいると安心します。専門店とかだと、中には職人的な気難しい人もいるので、緊張する時もあるんですよね。

僕らはそういう空気感は出さないようにしています。自分が中学生くらいの頃、大阪にある『ACT』というドラム専門店に通っていたのですが、そこのスタッフさんが「テリー・ボジオの新しいビデオ入ったから一緒に観ようよ!」って感じのノリで、気軽に話せるとてもいい雰囲気お店でした。自分が店をやるんだったら『ACT』みたいにしたいって思ってました。

中学時代からドラム専門店に通っていたということは、村上さんのドラム歴も相当ですね?

ドラムのたたき真似なんかも含めると中二の頃からやってまして、今が46歳なんで、もう32年になりますかね。大きなサイズのドラムセットで大きな音が必要なバンド限定の、いわゆるコージー・パウエル的な音のバンドでの活動ばかりですが(笑)。

シンバルの在庫は1600枚くらいありますね。今は二階にあるんで、そのうち床が抜けると思いますよ。

ドラムステーションで、最近の売れ行きの良い商品は?

トルコ系のシンバルですね。IstanbulBosphorusなどが良く出てますね。

シンバルといえばZildjian(ジルジャン)が人気だと思っていましたが…。

もちろんZildjianは人気で、世界のシンバル売り上げのシェア50%を占めてます。残りのシェアを他のメーカーで分け合ってる感じで、その中でもIstanbulやBosphorusはかなり少ないが、うちの店では重要なシンバルです。

なぜシェアの少ないトルコシンバルが売れていうるのでしょうか?

多種多様の商品を多数揃えているのでジャズ系の方などが多く来店してくれるんです。ジャズ系ドラマーはライドシンバルに対するこだわりがすごいので、味わいのあるシンバルを多数揃えているお店が必要なんですね。毎月買っていく人もいらっしゃいます。

ジャズはサスティンの長さや鳴り方が直接グルーヴに影響するから、ライブハウスの音の鳴り方によっても、その都度シンバルを変える必要があるんでしょうね。

そうですね。場面場面で変える必要がります、トリオバンドとビッグバンドなどでも鳴り方や必要な音は随分変わってきますからね。

そうなると、このフロアにも夥しい数のシンバルにも納得です。

在庫は1600枚くらいありますね。今は二階にあるんで、そのうち床が抜けると思いますよ。

サラッと言うし(笑)。しかし、よく見ると、今まで見たこともないようなシンバルもあります。

当店のシンバル担当がトルコまで行って直接買い付けて仕入れているんです。シンバル以外でも、僕もdw(Drum Workshop)の工場に行って、ドラムセットを5セットとスネアを10個ほどオーダーしてここで販売したりしています。店に並ぶとすぐに売れてしまいますが。

次に、村上さん独断のお薦め商品などありましたら教えてください。

僕が企画して、SONORさん、輸入元のコマキ通商さんに相談してコラボしたものがあります。『こういうものがあったらなあ』という思いを伝えて作ってもらったドラムステーションオリジナルのSONORスネアドラムです。

ドイツのSONOR社ですか!? 僕もペダルとスネア持っていますよ。昔のピッコロスネアですが10万円くらいしたやつです。チューニングのネジがマイナスドライバーみたいな特殊な形をしていた頃のスネアですね。

SONORのDesigner Seriesですね。あれは確か当時のドイツのデザイナー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたんですよ。ベンツと並んで賞を獲った優れものです。

SONORと村上さんのコラボ商品だなんて、ほんと一体何者ですか(笑)?

ですよね(笑)。実際、良い意味でここまで頑張って来れたのと、皆様に『コージー村上』と言って頂いてるおかげだと思います。

スタッフ7名、全員が現役のドラマーやパーカッショニストです。

気軽に取材に来たはずが、なにやら非常に濃い匂いがしてきました(笑)。メンテナンスとかもお任せしても安心出来そうです。

ウチの店はスタッフが7名いるんですが、全員が現役のドラマーやパーカッショニストなんで、どこか悪いかなどはすぐわかります。来ていただければ、物も揃ってますし、ご相談にものれますよ。どうしても駄目なものはメーカーや修理専門の人に出します。

さて、話は変わりますが、シンバル一つとっても好みのサウンドは人それぞれで、お客さんとスタッフでもその感覚の違いはあると思います。そんな時、お客さんの求めているものを的確に探し当てるのは難しくないですか?

そういった場合は、まず一つシンバルを出してみます。シンバルを出したうえで他のシンバルと比べていきます。そのシンバルに対してどういう音が欲しいのかを聞きだします。一つのシンバルを基準にすれば、お客様から自ら『もっとちょっとドライな音』とか『もうちょっと深い音』など言ってくれますから、お客様から聞きだす形になりますね。

なるほど、基準を作ると。

逆に、『買いに来たけど、音にこだわりはないです』というのが一番焦りますね。「うわ、どうしたらいいだろう?」ってなっちゃいますね(笑)。ま、そういう時は物質的な聞きだし方をするようにしてますけどね。

物質的とは?

予算を聞いたり、普段使ってるスタジオのセットの音が好きか嫌いかなどを聞き出して、お客様の求めているものを見つけます。

ドラム専門店ならではのエスコートですね。お客さんも心強いと思います。最近は、専門店も増えてきましたよね。

昔はどのお店も、総合楽器店の商品ジャンルの一つとしてフロアにドラムコーナーを設けていましたが、いざ扱ってみると意外に売れることがわかってきました。そこからウチ(池部楽器)と山野楽器ROCK INN(旧新星堂ROCK INN)さんの二社が、総合楽器店では初のドラム専門店を作ることになったんです。これは自慢になりますが、ウチの方が最初です(笑)

自慢してください(笑)。実際クオリティー高すぎですし。

ただ、専門店が増えましたがドラマー人口自体はそこまで増えてないんですよ。このままだと専門店同士の潰し合いになるんじゃないか? とも思いますね。

なるほど、でもここまで大きいお店なら大丈夫な感じもします。

お店が大きくなったせいで間延びしてしまった時もあったんです。『何でも置いてあるのでいつでも来てください』というスタンスだったせいで、昨年くらいは痛い目にもあってしまって…。

痛い目…?

やはり、お客様は目的をもってお店に来てるということです。やみくもにお店やホームページにドカッと情報を載せるだけではダメなんですね。目的を持ったお客様のためにも、『これは凄いスネアです』、『うちはトルコ系のシンバルに強いです』等と特徴をもたせ、かつ、ピンポイントで商品を紹介することが大切だと気付かされました。

お客様の目的に沿った形でお店の意志を伝えることも大事なんですね。

そうですね。ドラムステーション秋葉原のSNSでおすすめ商品をピンポイントで紹介し始めました。例えば昨日もLeedyというメーカーの1920年代に製造されてあヴィンテージスネアをアップしました。

ドラムセットという一つの形を実現させるために、道筋をひとつずつ辿っていく楽器。夢の実現に一歩一歩向かうような作業と似ている。

大量のネット情報の中で良いモノを探すのも逆に大変ですもんね。村上さんやスタッフの豊富な知識でオススメをピンポイントで伝えてくれるのはありがたいです。

『ここに来たらなんでもある』という状況が、傲りまではいかないにしても、ちょっと気持ちが緩んでいたのかもしれません(苦笑)。どんなにモノがあろうとも、きちんとフェアを開催して、商品の魅力をしっかりと伝えていこうと思っています。

どこの現場でも伝えることの大切さは変わらないですね。それでは最後の質問です。これからドラムを始めようとしている人たちにメッセージをお願いします。

ドラムというは一つの楽器ではなく、楽器の集合体です。大太鼓であるバスドラムがあって、中太鼓であるタムタム、そしてスネアドラムがあり、さらにはシンバルもあります。シンバルもハイハットライドクラッシュ、他エフェクト系シンバルもあります。そして、それらを支えるスタンド等も必要です。

だからドラムというのは、ドラムセットという一つの形を実現させるために、道筋をひとつずつ辿っていく楽器なんです。それは、夢の実現に一歩一歩向かうような作業と似ていますし、僕はそこが楽しいところだと思っています。

スティックから始まり、練習パッド、スネア、シンバル、ドラムセット、そして現場に出れば機材の種類に変化を持たせ、自分の色を作っていく…、そんなふうに夢を追い求める楽器であり、僕らはその夢の実現のお手伝いをしたいと思っています!

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2015年3月 / 最終更新日 2019年7月)

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