楽器屋探索ディープレポート Vol.33
三軒茶屋 太子堂楽器店
- 太子堂楽器店について
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昭和3年(1928年)創業。「音楽で思いやりの心をはぐくむ」をコンセプトに、地域に根ざす老舗の楽器店。ギターなどの楽器から弦やスティック、小物類、楽譜、音楽雑誌など幅広く取りそろえ、茶沢通りに面した店先には、いつも色とりどりの「奏でる楽しさ」が溢れている。匠の技術による修理・調律、レンタルスタジオはスタンウェイのグランドピアノを含む全8台のピアノを完備。音楽教室は一流講師による個人レッスン方式で、クラシック、ポップス、ジャズの各コースを用意。三軒茶屋駅から徒歩1分。
- 太子堂楽器店舗情報
- 太子堂楽器店 公式サイト
世田谷区太子堂4-23-14
TEL:03-3413-2233
営業時間:平日 10:00~20:00 / 土日祝祭日 10:00~19:00
楽器店の中の人に話を聞いてみた〜 太子堂楽器店 編
このコーナーは、楽器店でミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューしてお話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。
本日は三軒茶屋の太子堂楽器店オーナーの富田正文さんにお話をお伺いします。老舗の楽器店ですが創業はいつですか。
1928年(昭和3年4月)、ここ三軒茶屋で創業いたしました。
となると今年で91年目!富田さんがお店を継がれたのはいつですか?
30年ぐらい前、1980年代です。詳しい年月は覚えていません。
かなり過去にさかのぼりますが、どういった経緯で創業されたのでしょうか?
先代が音楽好きで、最初は「蓄音機」とギター、それからレコードを売るお店からはじまりました。
お店で扱う商品や運営形態もさまざまに変化してきたと思いますが、スタジオを始めたのはいつごろですか?
スタジオを作ったのは戦後に入ってからです。
戦後となりますと、いわゆる音楽スタジオはほとんどなかったのでは?
なかったですね。というより、音楽教室を開く目的で作り、お客さまに使いたければ使ってね、という感じで、メインはピアノの練習。当時は、いわゆる「ライトミュージック」の練習などで使うことはなかったですね。
スタジオにはピアノが8台、かなり高価なグランドピアノもありますね。
4Fのピアノは、ロシア・アルゼンチン・イタリア等の著名なピアニストが弾きに見えますよ。それと、私共のお宝は、世界的に著名な修復氏の方に修復していただいたベヒシュタインの100年前のアプライトピアノ。これはその時代の部材で修復し、その時代の音を再現しております。秀逸です。
レアもののラディッグのドラムセットも置いてありますね。
ドラムのレッスンで使っています。
地域とのつながりで、ここまでやってこられました
ところで、とくに最近、楽器店をとりまく環境も大きく変化しています。そのあたりのお話をお聞かせいただけますか?
それはもう激変。とくに、インターネット通販によって物流が大きく変わりました。自分はネットについて疎いので従業員に任せていますが、まあ、こればかりは、どちらの楽器屋さんも大変だと思います。
そうですね、実際に楽器店の数も少なくなってきていますが、影響するところはありますか?
うちは、あくまで地域密着。とくに、戦後から学校で使う楽器や教材を手配する、いわゆる「学校販売」もやっていて、おかげさまで新学期の季節はいつも目の回る忙しさ。今もやっと落ち着いたところです。
なるほど、地域の学校とも、永年にわたって築いてきた信頼関係があるのですね。
そうです、地域とのつながりで、ここまでやってこられました。でも、先の事は分かりません (苦笑)。
お店には、バンドマン、学生、ご年配の方まで来店されていました。メインのお客さまは地元の方になるのですか?
地元の方はもちろん、それこそ国内外、老若男女、いろいろな方が来られますよ。大きなお店でもなく、専門店のような店構えではありませんが、百万円以上するプロ仕様のギターも扱うし、そういう楽器を修理、メンテナンスできる職人とも仕事をしていますよ。オーケストラやフル・ジャズバンドのお手伝いもしています。
かなり有名なミュージシャンもご来店されているようです。もう少し詳しくおしえていただけませんか?
いやいや、言えるのはここまで。誇大なコマーシャルになっちゃうから、これ以上は控えます。初心者からプロまで、幅広く全般に関わっています。
了解しました。それでは、ここまで長い間、事業を継続していける秘訣は何でしょうか?
それも言っちゃったら、みんなが真似するでしょ?(笑)。
そこは企業秘密ですか?
いや、秘密みたいなものは何もないですよ。まあ、たとえば、お店の形態として「広く浅く」ということはありますが、そういうのは自分たちのやり方であって、他の人が真似しても同じようにはいかないでしょ。
音楽で思いやりの心を育む、という創業からの理念を大切に
正直、ウェブサイトではあまり語りたくない?
そういうわけではないですが、私は、基本的にインターネット上の広告とか評判というのは信用していません。うちは、誇大な広告も一切しないし、ほとんどお客さまの口コミだけでブランドを育ててきた自負がありますから。
誠実な取り組みで、地域に根ざしてこられたのですね。
いまや街の小さな楽器店ってとても貴重な存在ですよね。だから「音楽で思いやりの心を育む」という創業からの理念を大切にしています。
つづいて、これは毎回お聞きしているのですが、富田さんのご出身と音楽の出会いをおしえてください。
先代のころからここにいるからね、生まれも育ちも世田谷です。音楽との出会い、となるとむずかしいですね。
それでは、とくに好きなミュージシャンとか、よく聴く音楽は何でしょう?
それもむずかしいね(笑)。何でも聴くから。演歌・南米系・中南米系・イタリア系・クラシック…、ジャンルも多岐にわたるし、挙げるとキリがないね。
ありがとうございます。それでは最後に、太子堂楽器店からのメッセージをおねがいします。
楽器をはじめたいと思っているすべての方へ、まだ、なんとなく「やってみたいな」というイメージだけしかなくても大丈夫。楽器やPA機材についての質問や、「電源の入れ方」からでもかまいません。ぜひ、お店で相談してみてください。はじめはみんな初心者、どんな小さなことでも親切ていねいに対応しますよ。
それは心強いですね。はじめて楽器を始めるときは「何がわからないか、わからない」ですからね。
そうですよね。管楽器専門店にピアノの相談をしに行ってもしょうがないけど、うちなら、どんな角度や切り口からでも、正確な技術と知識をお伝えします。初心者の方が必要としているのは専門的な「深さ」ではないですからね、モットーは広く浅く、そして「地域貢献」の一念でこれからもやっていきます。
地域に根ざした三軒茶屋の太子堂楽器店に、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。本日はありがとうございました。
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