楽器屋探索ディープレポート Vol.25
- ハートマンギターズについて
- イケベ楽器店がプロデュースする「渋谷IKEBE楽器村」16店舗のひとつで、温かみのあるレンガ壁と緑の看板が目印のアコースティック楽器専門店。1Fにはアコギ、エレアコ、マンドリンなど常時350本以上を在庫。2Fには国内外のハイエンドブランドやルシアーメイドなど高級品をはじめ、ウクレレも200本以上ラインナップ。初心者の方からプロプレイヤーまで、楽器とのきらめく出会いをスタッフが丁寧にサポート。地下1Fにリペア・カスタマイズ工房「WSR」を併設。
楽器店の中の人に話を聞いてみた〜 [移転] ハートマンギターズ 編
このコーナーは、楽器店でミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューしてお話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

ハートマンギターズ 主任 石河太陽氏
本日はイケベ楽器系列のアコースティックギター専門店「渋谷ハートマンギターズ」主任の石河太陽さんにお話をお伺いします。オープンはいつになりますか?
2004年12月のオープンになります。
ハートマンギターズは「アコギの聖地」と言われるほどアコースティックギター専門店として有名ですね。
オープン当初は、ヴィンテージ・エレキギターなども取り扱っていましたが、2009年末に「アコースティック楽器の総合専門店」というコンセプトで、中古や入門用のアコースティックギターを扱っていた別店舗の「246ギターズアコースティック」を統合リニューアルし、現在の形態に至ります。1Fにあったヴィンテージフロアは「ハートマンヴィンテージギターズ」としてすぐ近くに独立・移転しました。
石河さんがハートマンギターズに入社されたのはいつ頃ですか?
僕は、2007年7月に入社しました。その前は、7年ぐらい浜松(静岡)にある楽器店のアコースティック・フロアを担当していました。
ハートマンギターズにはどういった流れで?
ハートマンギターズの立ち上げに関わった元スタッフが専門学校の同期だったのです。その頃、家の事情などもあってこっち(東京)に戻ってきたいと思っていて、仕事について相談したところ「うち(ハートマンギターズ)に来ない?」と誘われたのがきっかけで入社しました。
店内にはアコースティックギターはもちろん、ウクレレの品揃えも豊富です。ウクレレは、最近とくに注目されているようですね。
これまで、一般にはマイナーな楽器でしたが、2000年代に入ってからウクレレを作る人が増えてきました。ギターに比べてシンプルな構造のため、個人レベルで製作する方も多く、それまで見たことないような個性的なウクレレが登場してきました。当時の担当者が、そういうウクレレのおもしろさにのめり込んだのが、当店でウクレレを積極的に取り扱う始まりだと聞いています。
高級品も多いアコースティックギター専門店に、ウクレレが並んでいて、少し意外でした。
昔の(ウクレレ)は音程も合いづらいし、見た目も小さいので、楽器として軽視される風潮がありましたが、ウクレレ製作が切磋琢磨される中で、ハワイアンに限らず、ロックやポップス等、アンサンブルに取り入れられても通用するクオリティの楽器が増え、世間にも広く認められるようになりました。
ウクレレが楽器として市民権を得てきたわけですね?
それでも、過去のイメージを持たれている方もいますので、お店として魅力を発信し、楽器としての位置づけを上げていきたいですね。ギターに比べてスペースも取らず、経営的にもメリットの多い商品ですし。

さまざまな角度からお気に入りの楽器を選ぶ楽しさがある
ウクレレの魅力、人気の理由は?
ギターに比べてオープンな市場なので、いろんな楽器を先入観なく、平等に楽しめるところですかね。ギターにはギブソン、フェンダー、マーチンといった定番のブランドが確立していますが、ウクレレにはまだあまりありません。長く作り続けているのはマーチンとカマカくらいかな。形がおもしろい、素材がおもしろいとか、さまざまな角度からお気に入りの楽器を選ぶ楽しさもあるのでははないでしょうか。
小さくて、カワイイので、何個も集めたくなりますね
そうですね、このサイズですから、ギター1本のスペースにウクレレなら4、5本置ける、コレクター魂をくすぐるようなところもありますね。お値段も1、2万円でもそれなりのものが買えますし、10万円あれば、かなり良いランクのものが買えます。
さきほど店内を見せていただいて、ショーウインドウにある300万円相当のウクレレがありましたが。
ああ、あれは特殊な例です(笑)。40年代のコレクターズアイテムでマーチンのビンテージです。当時のコレクターさんが、2本入るダブルケースに稀少なマーチンのウクレレを入れて所有されていたのを、そのまま展示しています。
一方で、アコースティックギターは100万、200万円の商品がショーケースの外にディスプレイしてありますね。
楽器の状態をしっかりと管理した上で、弾きたい楽器があればどれでも弾いていただけますよ、というスタンスです。少しでも興味がある楽器があったら、遠慮なくスタッフに声をかけてほしいです。
実際に試奏してみて、店員さんとの会話の中で、自分が求めている楽器の輪郭がはっきりしてくることも多いと思います。
きちっとその楽器の良さを知っていただかなければ、本当にその楽器に100万出してもいいのか、判断ができませんよね。お客さまにとって最良の楽器をご提案できるよう、しっかりコミュニケーションを取らせていただき、じっくり楽器を選べるスペース、時間のあるお店を心がけています。

「ああ、音楽は自由でいいんだ」と思えるようになった
石河さんと音楽の出会いについて教えてください。
音楽との出会いは、小学3年生の時に自分から「バイオリンをやりたい」と頼み込んでやらせてもらったことですね。当時、ピアノを習っていた友人はいましたが、僕はバイオリンに魅力を感じました。
クラシック出身だったのですね。それからずっとバイオリンを?
それが中学2年の時に最初の「壁」にぶつかりまして。今後のレッスンの進め方や考え方で、父親と衝突して、そこでバイオリンはやめてしまいました。父親は神奈川フィルハーモニーの演奏会なども撮影していたカメラマンで、大のクラシック好きでした。
やめたいと思う出来事があったのですか?
バイオリンは身体の成長とあわせて、1/2サイズ、3/4サイズと楽器のサイズをアップしていくのですが、いよいよ楽器もフルサイズに新調しなくてはいけない、というときに、父親から「今のやり方だと伸びない」「だから、先生を替えないと」など、いろいろ決断を迫られまして。
良かれと思っての親心でしょうが、多感な時期にはプレッシャーですよね。
ほかにもやりたいことがあったし、上からガーガー言われるのも煩くて、結局、フルサイズを買う前にやめてしまいました。小3から続けていたので、ある程度の楽曲が弾けるまで上達していましたが、その時は音楽に触れあうこと自体イヤになっちゃっていました。
中学生だと、ロックやポップスに目覚めて、影響を受ける年頃だと思いますが?
当時は、聴いていた音楽もクラシックメインで、いわゆる流行りの音楽には馴染みがなくて。中学3年生の時、好きな曲を演奏発表する、という音楽の授業があって、クラスメイトがエレキギターやベースを持ち込んで、バンドものをやっている姿をみて、なんとなく「楽しそうに演奏するなあ」と思いながら、眺めていたことを覚えています。
音楽との距離を、ふたたび縮めることになったきっかけは?
高校に入ってから、自分のCDプレイヤーを買って、音楽を自由に聴ける環境が整ったこと、そして自宅にあったクラシックギターを弾いてみたりして、それまでの空白があった分、「ああ、こういう世界もあるんだ。(音楽は)自由でいいんだ」と思えるようになりました。

同級生が上手で「演奏でコイツらに勝とう」なんて無理だなと (笑)
そこから、新しい音楽の世界が広がっていくのですね。
はい。高校生の冬には、初めてエレキギターを買ってもらって、遅ればせながらバンドデビューもしました。でも周りには、すでにバンドをやっている子が多く、今もプロとして活躍している人がいるほどレベルが高くて、これは演奏でコイツらに勝とう、なんて無理だなと (笑)。
プレイヤーを目指そうとは思わなかった?
趣味としては楽しめるけど、プロとして演奏で生計を立てていくことは自分にはできないと直感でわかりました。もしかしたら、子供の頃からバイオリンをやっていたからこそ、気づけたことかもしれません(苦笑)。
これから自分が進むべき道が、その時から見えていたのですね。
ギターという楽器自体は好きだったので、プレイヤーではない形で楽器に関わる仕事をしようと思いました。同級生で上手な人たちを身近にみていたので、楽器を作ったり、ケアしたりする立場になって、彼らと何かやれたら面白いなと思って。ギターエンジニアの専門学校に進んで、この道に入りました。
若き日の道のりが、プレイヤーをサポートする今のお仕事に結実しているように思います。それでは、最後にハートマンギターズからメッセージをお願いします。
アコースティックギターというと高級品もあって、お店に入るのに気構えてしまうかもしれませんが、ハートマンギターズでは、初心者の方からプロの方まで、お客さまにあった楽器をじっくりと選んでいただけるお店づくりをしています。興味がありましたら、ぜひお店に遊びに来て、遠慮なくスタッフに話かけてくださいね。
本日は、貴重なお話をありがとうございました。
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