楽器屋探索ディープレポート Vol.11
DRUMS PROSHOP GATEWAY
- ドラムプロショップGATEWAYについて
- 今年で35年目を迎える京都で創業した老舗のドラム専門店。その後、東京は渋谷に進出、数回の移転ののち富士見ヶ丘店へと腰を据える。楽器販売だけではなく、スタジオ貸しやドラムスクールも開設し、ドラムという楽器を、より密接に感じられることが出来るお店。老舗の専門店としてその信頼性は高く多くのプロミュージシャンが永く足を運ぶお店として広く知られている一方、富士見ヶ丘移転後は地域密着型の楽器ショップとして、ファミリー・キッズ向けのレッスンやイベントなども積極的に行っている。
- ドラムプロショップGATEWAY店舗情報
- DRUMS PROSHOP GATEWAY公式サイト
杉並区久我山5-24-31
お問い合わせ:03-6671-5998
営業時間:AM10:00~PM10:00 (火曜定休)
楽器店の中の人に話を聞いてみた〜 drumproshop GATEWAY 編
このコーナーは、楽器店でミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューしてお話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。
富士見ヶ丘(杉並区久我山)のドラムプロショップGATEWAY代表の植木さんにお話を伺います。よろしくお願いします。まずはお店の歴史などをお聞きしたいのですが、以前は渋谷に店舗があった記憶があります。
はい、渋谷でもやっていましたね。うちは、35年前に京都で創業して、その後、1985年くらいに渋谷店ができました。京都店、渋谷店までは先代が経営していましたが、2008年に先代が引退したのをきっかけに私が引き継いで、富士見ヶ丘にやって来ました。富士見ヶ丘も12月(2015年)で8年目になります。
35年前の創業となりますと相当な老舗になりますね。
GATEWAYの看板としては結構長いお店です。渋谷でも3回くらい移店しています。最初は、道玄坂のYAMAHAがあった場所の、もう少し坂上の方、最後はMUSICLAND KEYさんとかイケベ楽器さんなどがある桜丘町の奥に入ったところでやっていました。
GATEWAY京都店というのは現在もあるのですか?
京都店は、働いていたスタッフが私と同じように独立して「ドラムショップアポロ」というドラム専門ショップとしてやっています。現在GATEWAYはここ富士見ヶ丘のみです。
渋谷から移転した経緯、また富士見ヶ丘を選んだ理由というのは?
渋谷時代、先代が引退するタイミングで二代目のお話をいただき、当時入居していたビルも再開発の都合で取り壊しの対象になったんです。どこかに移転しなければいけないということで、井の頭線沿線を渋谷から、下北沢、明大前、吉祥寺と探している中で、たまたま見つけたのがココです。建物を丸ごと借りられたので気に入って、偶然にも隣の高井戸駅にはCANOPUSさんもありますし(笑)。
店内には個性な商品が並んでいますが、GATEWAYならでは、のこだわりなどありますか?
こだわり、と言うか、太鼓に関わることは大体なんでもやっていますが、プロショップとしてそれなりに目利きをした商品をセレクトして販売しています。他には、アフターサービス、修理・改造、楽器のレンタル、店舗併設スタジオ、ドラムスクール、プロミュージシャンのローディー、TECH業務までいろいろやっているので、楽器屋としてだけでなく、プロミュージシャンの現場と一般のお客様の間を行き来しているお店です。そういうと、敷居が高いイメージがあるかもしれないですけど、基本はそんなことないですよ。
そうですね、とてもアットホームな雰囲気も感じるお店です。ところで、改造というのは…?
たぶん、楽器屋さんで改造作業をやっている所は少ないと思います。例えば、フロアタムをバスドラムにしたいとか、ドラムの色を変えたいとか、ドラムにパーツを付けてカスタマイズしたいとか、錆びた楽器をリフレッシュしてオーバーホールしてまた使いたい、などの要望にお応えすることです。他には、シンバルにシズルを打つというのも一応改造に入りますかね。結構ご要望が多いんですよ。
多岐に渡りますね。色を変える、というのは塗り直すことで?
塗装で色を染め直すことはできないのですが、タムには、カバーリングといってラメのシートが巻いてあって…、例えばこのリンゴスターのやつとかですね(※写真)。これは元が黒ですが、こういうラメ色にしたいという注文もあります。
おお、かっこいい。
なかなか見かけない色だと思います。カバーリングも経年で傷んできたり変色したり、傷ついてボロボロになったり、古いものだと破けてしまう場合もあります。そういうのを改造、というかリペアをしていきます。
カバーリングが変わるだけでも印象が一新しますね。気持ちいい。
他には、修理部門の話になりますが、金具の修理やネジ山がなめてしまったというご相談も多いです。古いものですと、すでにパーツの在庫がないメーカーのものもありますが、壊れた一カ所だけのパーツが別物だと気にする方、こだわる方も多いですから、できるだけ元の状態を復元できるように修理を心掛けています。
このような修理はお店の方が作業をなさるのですか?
そうです。私かクラフトマンがやります。もちろん、メーカーやモデルによって出来ることと、できないことはありますので、まずは相談していただきたいですね。
クラフトマンに相談出来るのは頼もしいです。店内にはスタジオも併設していますね。
ドラムスクールでも使用していますが、ドラム以外でも近所で楽器演奏をされる方によくご利用頂いています。バンドが演奏できる部屋もありますのでレンタルスタジオですね。うちはドラムショップなのでドラムセットはビンテージのグレッチとかソナーとか、その辺では置いていないようなセットが入っていますよ。そこは私の趣味ですけどね(笑)。なので、全体的には、太鼓奏者以外でも、スタジオのご利用をキッカケに通っていただくお客さまも多いです。
28歳の時にGATEWAY二代目として独立の一大決心。
では次に、植木さんと音楽の出会いの話を教えてください。
中学生くらいにつるんでいた仲間の中でギターを持ち出したやつがいて。自分はいとこがドラムをやっていたので、じゃあ、ドラムやりたいなあと思って…、そんな感じで音楽に触れ合ったかな。最初から音楽にものすごく興味があったということでもなくて(笑)。高校ではバンドを組みました。
高校時代のバンドではどんな音楽をやっていましたか?
最初にコピーしたのはBUCK-TICKさんです。僕の周りではLUNA SEAさんなどのビジュアル系が流行っていましたね。その後、洋楽も聴くようになってニルヴァーナやビートルズもやりました。
ドラムは独学ですか?
そうです。完全に独学だし、インターネットもない時代なのでドラムマガジンだけが情報源でした(笑)。
VHSの教則ビデオなどもあった頃ですよね?
ありましたね(笑)。僕は出身が茨城なので、普段はそういう教則ビデオでプロドラマーが使っている機材を見て、たまに東京に来ては、御茶ノ水などでバイト代を注ぎ込んで楽器を買っていました。
その後もずっと独学ですか?
東京に出て来るまでは独学です。高校卒業直後、英語の専門学校への進学で上京しました。その学生時代に、「どうやら、バーナード・パーディらしき人が出入りしてるマニアックなドラム屋があるぞ」という話を友達から聞いてGATEWAYを知りました。その後、20歳の時にGATEWAYのドラムスクールに通い始めました。
GATEWAY一筋ですね(笑)。
一筋です。ここしか知らないですね(笑)。習うまではロックしか知らなかったし、他のジャンルは聴いたこともなかったのですが、いろんな音楽に出会って一気に音楽への興味が高まりました。
ロック以外のジャンルにも?
R&B、ソウル系、ジャズ系など、ブラックミュージックには「ずっぽり」ハマりました。中でも一番ハマったのがブラジル系音楽です。ブラジル系はハマりすぎて、3回程、現地まで太鼓の修行に行きましたよ(笑)。
ドラムの勉強のためにブラジルへ!?
ブラジルという国は、パーカッションが先に発展して、それをドラムセットに応用していくみたいな面が多いんです。ドラムも習いましたが、同時にパーカッションもすごい面白くなりました。それまでは、パーカッションの知識は楽器屋として見聴きするぐらいしかなかったので、どっぷりハマりましたね。
現地ではライブで演奏などもしたのですか?
基本はレッスンを受けていました。ブラジルはフレンドリーな人が多くて、ライブを見に行って、上手な人に声掛けて仲良くなるなんてこともあります。勿論レッスンにはお金を払いますが、食事に行ったり飲み歩いたり、ライブを見に行って、そのまま一緒に演奏ということもありました。
GATEWAYスクールの生徒から、のちにスタッフとして参加することになるのですね?
はい。21歳の時に、TECH・ローディー部署で研修生の募集があって、プロの現場を見聴き出来るチャンスだと思い応募しました。そこから4〜5年その部署で鍛えられて、スクールの講師やWEBショップの商品レビューを担当したり、店番にも顔を出すようになりました。そうこうしているうちに、28歳の時に、先程も言いましたGATEWAY二代目として独立のお話をいただいて一大決心し、今に至ります。
渋谷から富士見ヶ丘へ来て人とのつながりが深くなった。
富士見ヶ丘は、渋谷に比べると人口、というかお客さんの数は少ないです。この辺りの影響などをお伺いしてよいですか?
来ていただくお客さんに対しては、せっかく富士見ヶ丘まで来てもらったのに欲しい物がなかった場合など、ご不便をお掛けすることがあるかもしれません。でも、良い面として、渋谷の頃よりもゆったり接客できるし、富士見ヶ丘って、東京都にしてはほっこりしている街なんですよね。
静かでゆっくりした時間が流れる街ですよね。
近隣のお店とも付き合いがあって、今や僕も商店街の役員になっています(笑)。そして、こっちに来てから大きく変わったのは、富士見ヶ丘は住宅街でファミリー層が多いので、「子供のためのスクールをやっていませんか?」というお問い合わせが多かったということです。なのでキッズスクールも作りました。
富士見ヶ丘に移転した甲斐のある展開ですね。
近所の子供達が通ってくるんですけど、レッスンじゃない日も遊びに来たりして、前よりも人間関係としては深く結びつくようになったんじゃないかな。
渋谷だと競争的な部分も多そうです。
渋谷では、近くに同じようなお店もあって競争的な部分はありましたね。便利だった面がありますが、こっちはこっちで新しい出会いがあっていいですね。キッズクラスの子供たちと親御さん、講師も引っ張り込んで、KIZUMBINHA(キズンビーニャ)というサンバチームを立ち上げて、商店街の夏祭りや中学校のイベント参加も恒例になってきました。
富士見ヶ丘こそがGATEWAYに最適な街だったのかもしれませんね。
そう思います。つながりが深くなったし。こっちの方に住んでいるプロミュージシャンも多いので、協力的にレッスンの指導をしてくれたり、イベントに一緒に出てくれています。
まさしく、地域密着型ですね。
渋谷の頃も、店としては同じようにやっていたんですけど、やっぱり渋谷では子供のクラスもなかったし、スクールに通ってくる生徒さんもすでに音楽活動をしていて、もうちょっと上達したいとか自分のテーマを持っている人が多かった。こっちに来てからは、これからドラム始めてみたいという人が多いですね。それと、土地柄のせいもあってか、常連さん同士が仲良くなって一緒に演奏したり情報交換したり、スナック的な要素も出てきてます。(笑)
玄人やマニアだけじゃなく、ファミリー・キッズにも優しいお店になったのですね。
そうですね。“玄人好みの店”というイメージからは脱却しているつもりです(笑)。
それでは最後になりますので、メッセージなどあればお願いします。
ドラム&パーカッションに関しては、常にミュージシャンの視点で! というのを心掛けています。今日初めてスティックを持つ人から、キャリア30〜40年以上という人まで楽器の販売に限らず、さまざまな面で幅広く対応できますので、何かあればぜひお気軽にご相談いただければと思います!タイコの楽しさをもっとたくさんの人に広められるショップを目指してさらに精進していきます!
お店の在り方や地域とのつながりなど、本日はすてきな話をありがとうございました。
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